私は人よりずいぶん長い時間を生きた。そして、その時間と相応の数の人たちに出会ってきた。引きこもっていた時間も、相応にあったけれどね。ふふ、そうね。あなたは知っていたわよね。

そしてね。私を通り過ぎていった人たちは、もう、いないけれど。私の中で生きている。私がその人たちを忘れない限り、生き続けるの。

だれにも見せたくない、消し去ってしまいたい記憶も。
目を瞑って抱きしめていたい記憶も。
全部私のものよ。

全部、私が私である証。私の宝物。
手放す気なんてこれっぽっちもないの。

それらがどんなに心を焼いても、叫び出したいくらいの愛しさにむせび泣きたくなっても。忘れたくない。
忘れてしまったら、手放してしまったら、もうその瞬間私は私でなくなるから。

……そう。これは、私の生き方。あなたじゃない。

あなたにはあなたの生き方があるはず。
だから決して私を真似ようだなんて思わないでちょうだいね。あなたの生き方を見つけてちょうだいね。
それが私の、あなたへの、最後のお願い。

立ち止まったっていいの。後ろを振り返ってもいいし、座り込んでしまってもいい。
必ずね、背中を押してくれるだれかがいるから。手を振ってくれるだれかが、一緒に寄り添ってくれるだれかが、いるから。
あなたがだれかを想えば、その人はあなたと共に在り続けるから。

あなたなら、だれにも真似できないあなただけの生き方で、いつか前へ進めるわ。必ずよ。

私は少し先に行くけれど。ずっとあなたと共に在る。

忘れないで。ね?

大丈夫。
あなたは、きっと。間違えないわ。





時間軸:本編終了後
後期主人公から、苦難の道を歩み出したあなたへ。

末尾となりますが、お題配布サイト「frozen time」様よりお題をお借りしました。