いつか全てが終わったあと、あの人はいったいどうやって生きてゆくのだろう。
そんなことを、ずっと、考えていた。
一度だけ訊ねてみたことがある。もう、ずいぶん昔の話になる。
「そのときになってみないとわからない」あの人はそう言って、常と変わらぬ笑みを見せた。けれどもきっと定めていたのだろう。自分の行く末を。終着点の、その先を。
その時が来るまでは決して独りにはするまいと、独りで業に立ち向かわせることだけは許すまいと。同じ場所で同じものを見続けてきたあいつと、誓いを立てた。
それなのに。
あれから何度、俺たちはその誓いを守ることができなかったのだろう。
だが俺たちから離れたあのひとは、多くのものを失いながら、多くのものを得てもいた。
俺たちの存在はあの人の支えなのだと自負していた。しかし、目を逸らし続けてきたものを乗り越えて、前へ進んでいくための障害となってもいたのだと気づいたのは――もう、後戻りができなくなった後だった。
だから俺はせめてあの人から、あの人が背負おうとした終着点の先を奪ってしまおうと考えたのだ。
それが理由だ。
十分だろう?
それ以上、おまえは理由を望むのか?
俺は、おまえの理としての性質に抗い続けたあの人たちのだれも、おまえの相棒にするつもりはない。
だから俺と共にあれ。
俺はおまえを拒絶しない。だからといって信じもしない。ただ、受け入れるだけだ。おまえの容れ物として、共にあることを望むだけ。
そして、その先はただ祈ろう。
あの人たちの道行きが、穏やかな終わりへ続くよう。
時間軸:物語の終着、その、ほんの少しだけ手前
なにかに手を伸ばそうとする黒猫