ぼくの一番の願いはねー、絶対叶わないんだよねー。
どんなに努力したってどうにもならないことってあるでしょ? それだよ。それが、ぼくの願い。ずっとずっと昔から持ってて、叶わないって知りながら持ち続けてきた願い。

それなんなのかって? やだよ。話すわけないじゃない。話したこと? それもありませんー。だって笑われるだけだもん。えぇ? 話してみなきゃわからない? 珍しく食いつくねぇ……。わかるって。わかりきってるってば。

そもそもさぁ、一番の願いなんてそうそう簡単に口に出すものじゃないでしょ。だってさ。もし叶うかもしれなくたって、口に出しちゃったら逃げてく気がしない?

あぁもう、はい! この話おしまい!
とっとと夕飯食べちゃってよね。そうしてくれないと片付かないんだから。うん、まあ、片付けるのはぼくじゃないけどね。



だれにも言わない。
あの人には、もっと言えない。

ぼくがこの願いを口にするときが来るとしたら…それはきっと、あの人の傍にいられなくなるときなんじゃないかなぁって思うなぁ。でもそんなのは嫌だから。

だから、言わない。
ぼくはこれからもずっと、傍に居続けて生きたいからね。




時間軸:本編より数年前
叶わないらしい願いをあたため続ける白犬。